第三回「ブルージャスミン」
監督:ウッディ・アレン
キャスト:ケイト・ブランシェット
:アレック・ボールドウィン
:サリー・ホーキンス
ニューヨークの資産家ハル(アレック・ボールドウィン)と結婚し、セレブリティとして裕福な生活を送っていたジャスミン(ケイト・ブランシェット)は、ハルとの結婚生活が破綻したことで地位も資産も全て失ってしまう。サンフランシスコで庶民的な生活を送る妹ジンジャー(サリー・ホーキンス)のもとに身を寄せたものの、不慣れな仕事や生活に神経を擦り減らせ、次第に精神が不安定になっていく。それでも再び華やかな世界に返り咲こうと躍起になるジャスミンだったが…..
セレブリティとして社交界を謳歌し贅沢の極みを満喫していたジャスミンの人生の転落を描いた本作。主演のケイト・ブランシェットはそんな人生のどん底に堕ちた女性の戸惑いと不安定さと自立を見事に演じきり第86回アカデミー賞で最優秀主演女優賞を受賞しました。
ちなみに本作と同年アカデミー作品賞にノミネートされた「アメリカン・ハッスル」「ウルフ・オブ・ウォールストリート」「ネブラスカ」は、非常に大事な共通点があります。それは題材として詐欺を扱っているという点。リーマンショックの影響を踏まえ、盲目的に信じていた物に裏切られる悲哀。「ブルージャスミン」とはウッディ・アレン監督がそんな時代に対して皮肉と冷笑を込めた「虚栄という花」なのです。
ジャスミンとハルは結婚してマンハッタンにある大きな屋敷で生活します。ゲストルームが何部屋もあり公園の様な広い庭でガーデニングやパーティーを楽しむ姿に人々は羨望の眼差しを向けます。しかしその豪邸での幸せな日々は長く続きません。ジャスミンは夫の不貞と事業の失敗で住む家を無くしてしまうのです。
ジャスミンは華やかなセレブ生活からの転落に対応出来ず、次第に精神のバランスを崩していきます。先が見えない人生の流転と些細な事から日常のレールから外れてしまう恐ろしさを描いたこの物語は、決して他人事ではなく誰もがその危険性をはらんでいると思い身震いしました。