コトブキツカサさんが映画に登場する人物と建物の素敵な関係をツキイチ連載 映画における住居の風景

第十回「グランド・ブダペスト・ホテル」

公開日: 

第十回【グランド・ブダペスト・ホテル】
監督:ウェス・アンダーソン
キャスト:レイフ・ファインズ、ファーリッド・マーレイ・エイブラハム、ティルダ・スウィントン、トニー・レヴォロリ、他

1932 年、ヨーロッパ随一の高級ホテル「グランド・ブダペスト・ホテル」を取り仕切り、伝説のコンシェルジュと呼ばれるグスタヴ・H(レイフ・ファインズ)は、 究極のおもてなしを信条とし、大勢の顧客たちをもてなしていた。ホテルには彼を目当てに多くの客が訪れるが、ある夜、長年懇意にしていたマダムD(ティル ダ・スウィントン)が何者かに殺害されてしまう。マダムDの莫大な遺産をめぐる騒動に巻き込まれたグスタヴ・Hは、ホテルの威信を守るため、信頼するベル ボーイのゼロ・ムスタファ(トニー・レヴォロリ)を伴い、ヨーロッパを駆け巡る……。

第87回アカデミー賞では作品賞を含め9部門にノミネートされ4部門を受賞した本作は、シンメトリーを多用した画面と、時代によってスクリーンサイズを変えるという独創的で映像的な遊び心満載な作品。

前 作「ムーンライズ・キングダム」も好評だったウェス・アンダーソン監督という当代きってのフィルムメーカーの強力な磁場に引き寄せられた出演者は、レイ フ・ファインズ、エイドリアン・ブロディ、ウィレム・デフォー、ハーヴェイ・カイテル、ビル・マーレー、エドワード・ノートンなど。
映画界を牽引する錚々(そうそう)たる俳優陣が集まりました。

物語の舞台となっているグランド・ブダペスト・ホテルは、歴史があり格調が高い建造物なのですが、壁の色やロビーにあるソファや机の色が非常にポップで目を引きます。
ホテルという人々が行き交う場所で起こる事件を描いた本作は、上質なエンターテイメントとして昇華しています。

ウェス・アンダーソン監督のアートの概念を提示した本作を、是非体験してみて下さい。

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第九回「インサイド・ルーイン・デイヴィス 名もなき男の歌」

公開日:  最終更新日:2016/12/01

第九回「インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌」

監督:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
キャスト:オスカー・アイザック、キャリー・マリガン、F・マーレイ・エイブラハム、他

1960年代のニューヨーク、冬。若い世代のアートやカルチャーが花開いていたエリア、グリニッジビレッジのライブハウスでフォークソングを歌い
続けるシンガー・ソングライターのルーウィン・デイヴィス(オスカー・アイザック)。熱心に音楽に取り組む彼だったが、なかなかレコードは売
れない。それゆえに音楽で食べていくのを諦めようとする彼だが、何かと友人たちに手を差し伸べられ……。

生活に困窮しているルーウィンが紆余曲折を経て掴んだオーディション。ギターを掻き鳴らし歌い終わった彼にプロデューサーのグロスマンは企画
中の男女ユニットに参加しないかと打診します。
しかし彼は成功と信念を天秤に掛け信念を優先させてしまうのです。

才能があると多くの人が認めているにもかかわらず成功に手が届かず、断腸の思いで仕事を断念した人を数多く見てきました。
「運がなかった…」という一言で片付けるのは簡単ですが、もがき苦しみながら何かに挑戦している時は、足元に目視出来ない成功と挫折が待ち構
えている薄氷の上を歩いているのです。

ルーウィンはお金がなく住む所もないので、友人や知り合いの家を転々としながらノマド生活をしています。
寝起きにアパートの天井を見上げると、そこには常に新鮮で慣れない景色が広がりますが、彼はいつか音楽家と成功して自分の家を持ち、愛する者
と暮らしたいと夢見ているのです。

本作の主人公ルーウィンの生き様は歯痒くもあり憧れでもあります。
旅の途中、車窓から外を眺める彼の目は儘(まま)ならぬ人生を雄弁に語るのです。

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第八回「オールド・ボーイ」

公開日:  最終更新日:2016/11/01

第八回「オールド・ボーイ」

監督: スパイク・リー
キャスト: ジョシュ・ブローリン、エリザベス・オルセン、サミュエル・L・ジャクソン、他

1993年10月。泥酔したジョー・デュセットが目を覚ますと、見知らぬ部屋に監禁されていた。何者かが監視しているその部屋では、食事が与えられ、テレビでニュースを見ることも出来た。
そのニュースで彼は、妻が殺害され、自分が容疑者にされていること、幼い娘ミナが養子に出されていることを知る。やがて20年の歳月が流れ、彼は何の前触れもなく解放された。自分は、なぜ20年も監禁され、突然解放されたのか。理不尽な仕打ちに対する激しい怒りが、ジョーを凄絶な復讐へと駆り立てていくが…。

カンヌ国際映画祭に於いて審査委員長であるタランティーノ監督が強力にプッシュした結果、見事グランプリを受賞した不朽の名作として名高い韓国映画「オールド・ボーイ」(パク・チャヌク監督)をリブートした本作は「殺すよりも残酷な復讐」という前作のテーマを力強く踏襲しています。

理由も知らされずホテルの一室に監禁され悶え苦しむ主人公のジョーですが、この作品の大事なディティールは、その不気味で無機質なホテルの部屋です。

精神的に追い詰められるジョーの不安に追い打ちをかけるのが、この凶々しいホテルの存在なのです。

ジョーを演じるジョシュ・ブローリンは肥満体型から筋肉質の体型になるまで体重をコントロールして役へのアプローチを成功させ、時の移り変わりをトレーニングで鍛え上げたその肉体で観客に知らしめます。

精神的極限状態の中、ジョーの幻覚として現れる「にやけた男」はデヴィッド・リンチ監督作「ツイン・ピークス」に登場する「別の世界から来た小さい男」を連想しました。物語のスパイスとして登場するその男を演じたサンキ・リーは本作の監督であるスパイク・リーの実弟。彼の存在が奥深く、そして魅惑的な感情の動線へと観客を導くのです。

人が生きる上でのレーゾンデートル(存在理由)の崩壊を描いた本作。怨念と復讐心が混ざり合い人間の業さえ覆い隠す狂気を目の当たりにして、愛する者に対しての究極の情は時として人を破滅に向かわせると思い知らされました。

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第七回「LEGO(R)ムービー」

公開日:  最終更新日:2016/10/01

第七回「LEGO(R)ムービー」

監督: フィル・ロード、クリストファー・ミラー
キャスト:クリス・プラット、ウィル・フェレル、エリザベス・バンクス、他

エメットは、真面目を絵に描いたような性格で見た目は至って普通という、どこを取っても平均的なLEGO(R)のミニフィギュア。にもかかわらず、
どういうわけか人知を超えた能力を誇り、世界を救う鍵となる人物だと周囲から勘違いされてしまう。困惑する中、謎めいたグループのメンバーに
迎え入れられた上に、バットマンやスーパーマンも入り乱れる巨悪退治の冒険に出ることに。救世主やヒーローの自覚もなければ世界を救う覚悟も
ない彼は、行く先々で大騒動を巻き起こしていく。

全世界で子供に大人気のレゴですが、本作を子供向け映画だと思ったら間違いなく損します。平凡な男エメットが世界を救おうとする物語やカー
チェイスシーン、そして銃撃戦の演出に興奮しました。
「レゴムービー」にはバットマンを筆頭に皆が知っているアイコンが沢山登場して映画ファンを楽しませてくれます。一瞬しか登場しない隠れキャ
ラも居るので見逃さないで下さい。

レゴは元々デンマークの玩具会社の名前で「よく遊べ」を意味するデンマーク語「Leg Godt」から名付けられたとの事。
本作で使用された総レゴブロック数は1500万以上。ちなみに毎年360億個のブロックが製造されるそうです。

本作ではレゴで作られたビルやマンションなどの建造物が沢山出てきますが、どれも本当に精巧に作られていて、時として実写と思えるほどのクオ
リティです。
子供の頃にブロックや粘土、そしてプラモデルで遊びながら作った建物の具現化に興奮しました。

マニュアル社会への警告、そして人間は何歳になっても変わる事が出来るというメッセージがこの作品には込められています。
自分の目標に対して頭で考えるだけでなく、行動するべきだと教えてくれる「レゴムービー」を是非劇場で体験してみて下さい。

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第六回「LIFE」

公開日:  最終更新日:2016/09/11

【LIFE!】
監督:ベン・スティラー
キャスト:ベン・スティラー、ショーン・ペン、クリステン・ウィグ

世界で幅広く読まれたアメリカのグラフ誌「LIFE」の写真管理部で働くウォルター・ミティ(ベン・スティラー)は、思いを寄せる女性と会話もで
きない臆病者。唯一の楽しみは、むなしい現実から逃避する刺激に満ちた空想をすることだった。そんなある日、LIFE誌の最終号の表紙を飾る大切
な写真がないことに気付いたウォルターは、カメラマンを探すため一大決心をして旅に出るが……

平凡で単調な日々を過ごしながら、毎日妄想を繰り返す主人公のウォルター。

世界にとって特別な存在ではない彼の冒険は、僕も含めた多くの人々の物語でもあると感じました。

物語の舞台である出版社が入っているビルは、人間の存在が小さく思える程に巨大で近代的建造物です。

そんな会社の廊下を、ある目的のため必死に走るウォルター。

壁には過去の偉人達が表紙の雑誌「LIFE」が何枚も飾られているのですが、ありふれた男とセレブリティとの対比に監督の明確な意図が読み取れま
す。

本作は1947年に劇場公開された「虹を掴む男」の現代版。当初はスティーブン・スピルバーグ監督がメガホンを取る予定でしたが、ベン・スティ
ラーが自ら映画化を熱望して製作、監督、そして主演する事になったそうです。

「生きてる間に生まれ変わる事が出来るのか?」
一度きりの人生に数多くの「!」を得たいと思わせてくれる「LIFE!」を是非体験してみて下さい。

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第五回「大人ドロップ」

公開日:  最終更新日:2016/08/01

【大人ドロップ】

【監督】飯塚健
【主演】池松壮亮、橋本愛
高校最後の夏休み直前、親友のハジメ(前野朋哉)に頼まれ、彼が思いを寄せている同級生の入江杏(橋本愛)とのデートをセッティングしようとする浅井由(池松壮亮)。だが、それが原因で杏を怒らせてしまい、仲直りできないまま夏休みが始まった上に、杏が学校をやめて引越してしまう。由は心にモヤモヤとしたものを抱えた日々を過ごす。一方、大人になるために何かと経験を急ぐ女友だちのハル(小林涼子)からは、年上の彼氏との恋愛相談をもちかけられ、周囲が大人になろうとしていることに由は焦りを感じ始めるが……。

教室で1人運動場を眺める生徒。
帰りがけ人気のない下駄箱。
放課後、校内に流れる「主よ人の望みの喜びよ」など、青春映画の記号が詰まった本作は登場人物達が内包する思春期特有の苛立ちや、どこにぶつけていいか分からないモヤモヤを丁寧に描いています。

10代の揺れ動く心理の上澄みだけをすくった青春映画は正直心が離れてしまいますが、本作は愛する人から「貴方に会えて良かった」と言われる事の喜びが嫌味なく心に染み入るとても深くて切ない物語です。

思い出は美化されるという前提を踏まえて、学校という巨大な建物は多くの人々にとってノスタルジーの象徴ではないでしょうか?
初めて友達が出来たり初めて異性に恋したのが学校というロケーションだったという読者の方も多いと思います。
スペースに人が集まり人が交じり合い物語が生まれる。その舞台が学校という建物なのです。

大人の階段を登ろうとしながらも、モラトリアム的に踊り場で足踏みする学生達を丹念に描いたこの作品を観て、後悔ばかりの人生だからこそ結局その時を生きるしかないと思い知らされました。
青春映画のマスターピースとなりうる作品「大人ドロップ」を是非、体験してみて下さい。

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第四回「私の男」

公開日:  最終更新日:2016/07/02

「私の男」

【監督】 熊切和喜

【主演】 浅野忠信 二階堂ふみ

奥尻島に猛威を振るった津波によって孤児となった10歳の花(山田望叶)は遠い親戚だという腐野淳悟(浅野忠信)に引き取られ、互いに寄り添うように暮らす。花
(二階堂ふみ)が高校生になったころ、二人を見守ってきた地元の名士で遠縁でもある大塩(藤竜也)は、二人の歪んだ関係を察知し、淳悟から離れるよう花を説得。やがて厳寒の海で大塩の遺体が発見され、淳悟と花は逃げるように紋別の町を後にするが……。

世間の常識や理屈を超えた禁断の愛を描いた本作は否が応でも観客の頭にモラルという概念を植え付けますが、花と父親代わりの淳悟を結ぶ深い愛情は他者の倫理を軽くいなします。

映画の冒頭、海から這い上がるずぶ濡れになりながらニヤリと笑う花。あとに展開される物語の主役である彼女の「背徳的な美意識」がスクリーンから強烈に伝わりました。

2人が住む家は決して豪邸ではなく、かなりの築年数が伺える木造家屋ですが、淳悟と花にとってかけがえのない場所であり「家族としての聖地」です。世間から見れば歪んんだ父子関係を築き上げようとしてる淳悟は花と暮らせる事が全てであり一つ屋根の下で過ごす事が最も大事なのです。

劇中、花が淳悟について「あの人は心が欲しいんだ。だからあげたんだ…。」と語ります。埋めようとし、彼女もそれを真正面から受け入れるのです。

北海道の壮大な風景を舞台にした本作の見所の一つは35mmフィルムで撮影されたオホーツク海に敷かれる流氷です。この圧倒的な存在感を放つ流氷が作品のテイストと方向性を示唆してると言っても過言ではありません。ちなみに16年に渡る物語を撮影するにあたって、時代が醸し出す質感を演出するためフィルムとデジタルを併用したそうです。

1人の少女だった花の「成長」と「卒業」を描いた本作を是非体験してみてください。

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第三回「ブルージャスミン」

公開日: 

監督:ウッディ・アレン
キャスト:ケイト・ブランシェット
    :アレック・ボールドウィン
    :サリー・ホーキンス
ニューヨークの資産家ハル(アレック・ボールドウィン)と結婚し、セレブリティとして裕福な生活を送っていたジャスミン(ケイト・ブランシェット)は、ハルとの結婚生活が破綻したことで地位も資産も全て失ってしまう。サンフランシスコで庶民的な生活を送る妹ジンジャー(サリー・ホーキンス)のもとに身を寄せたものの、不慣れな仕事や生活に神経を擦り減らせ、次第に精神が不安定になっていく。それでも再び華やかな世界に返り咲こうと躍起になるジャスミンだったが…..

セレブリティとして社交界を謳歌し贅沢の極みを満喫していたジャスミンの人生の転落を描いた本作。主演のケイト・ブランシェットはそんな人生のどん底に堕ちた女性の戸惑いと不安定さと自立を見事に演じきり第86回アカデミー賞で最優秀主演女優賞を受賞しました。

ちなみに本作と同年アカデミー作品賞にノミネートされた「アメリカン・ハッスル」「ウルフ・オブ・ウォールストリート」「ネブラスカ」は、非常に大事な共通点があります。それは題材として詐欺を扱っているという点。リーマンショックの影響を踏まえ、盲目的に信じていた物に裏切られる悲哀。「ブルージャスミン」とはウッディ・アレン監督がそんな時代に対して皮肉と冷笑を込めた「虚栄という花」なのです。

ジャスミンとハルは結婚してマンハッタンにある大きな屋敷で生活します。ゲストルームが何部屋もあり公園の様な広い庭でガーデニングやパーティーを楽しむ姿に人々は羨望の眼差しを向けます。しかしその豪邸での幸せな日々は長く続きません。ジャスミンは夫の不貞と事業の失敗で住む家を無くしてしまうのです。

ジャスミンは華やかなセレブ生活からの転落に対応出来ず、次第に精神のバランスを崩していきます。先が見えない人生の流転と些細な事から日常のレールから外れてしまう恐ろしさを描いたこの物語は、決して他人事ではなく誰もがその危険性をはらんでいると思い身震いしました。

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第二回「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」

公開日: 

監督 :大森 立嗣
出演者:松田 翔太
   :高良 健吾
   :安藤 サクラ

孤児院で兄弟のように育ったケンタ(松田翔太)とジュン(高良健吾)は、電動ブレーカーでひたすら壁を壊すだけの解体現場で 働く日々を送っていた。安い賃金に過酷な労働環境、そして陰惨ないじめに遭い、行き場のないいら立ちを募らせた彼らは、兄貴のいる北 へ向かうことにかすかな希望を抱いて、旅に出ることにするが……。

ケンタとジュンとカヨは人として心に深い闇を抱えながら意図的にその闇から目を逸らし日常を過ごしています。そして未熟で不 完全だからこそ他人との強い繋がりを求めているのです。
「三人なら、生きられる」が本作のキャッチコピーですが、欠けたピースを補いながら寄り添い生きる3人の姿に心を鷲掴みされ ました。

ケンタとジュンは解体工場で働いていますが仕事は過酷で先輩から精神的にも肉体的にも追い詰められます。
そんな2人が仕事を終え工場に隣接している部屋で過ごす時間が誰からも邪魔されない休息の時間です。
2人が寝起きするその部屋で深夜に将来の夢を語らうシーンは壮絶な人生を歩む2人の柔らかい部分が見える僕が大好きな場面で す。

ロードムービーという魅惑的な響きは世代やジャンルを超えて観客に概念を訴えかけてきますが、本作ではケンタとジュンとカヨ が網走で服役中のケンタの兄に逢う為、3人で北海道を目指します。ケンタの兄は幼女誘拐未遂で逮捕され、出所後に傷害事件で再び逮捕 されてしまいます。その兄のせいで職場で先輩からイジメられていたケンタは漠然と人生の落とし前をつけに行くのです。

「世の中には二種類の人が居る。ひとつは人生を自分で選べる人。もうひとつは選べない人…」ケンタは自分が後者であると気づ きながらも現状からの変化を望みます。劇中スクーターでパトカーに突っ込むケンタは宙を舞い上がりますが、その刹那に彼は暖かい光を 見つけます。それはケンタ自身の未来への願望であり、安息の地だと感じました。

自分の居場所や存在意義を探す物語を青春映画として定義するならば、本作ほど混じり気のない青春映画は類稀です。滑稽な姿を 露呈しながらも現状を打破しようとするケンタとジュンとカヨが愛おしくてたまりません。人として不完全で不確定な日々を過ごしながら も、もがき苦しむ彼等を誰が蔑む事が出来るのか?
本作は貴方の人生を変えるかもしれない傑作です!

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第一回 「8月の家族たち」

公開日:  最終更新日:2016/04/12

監督:ジョン・ウェルズ
主演:メリル・ストリープ、ジュリア・ロバーツ

8月の真夏日。父親が失踪したと知らされ、オクラホマにある実家へ集まった三姉妹。真面目すぎて暴走しがちな長女バーバラ、 ひとり地元に残り秘密の恋をしている次女アイビー、自由奔放な三女カレン。彼女を迎えるのは、闘病中だが気が強く、率直で毒舌家の母 バイオレットと、その妹家族。生活も思惑もバラバラな“家族たち”は、つい言わなくてもいい本音をぶつけあい、ありえない“隠しご と”の数々が明るみに。普遍的なテーマをかつてないテンションでダイナミックに描き出す、誰も見たことがない“家族”の物語が、今そ の姿を明らかに!

強烈な運命と磁場によって「心の拠り所となるはずの家」に引き寄せられる家族の葛藤と成長を描いた本作。

実家に家族が集まる中、ジュリア・ロバーツ演じるバーバラが「未来は誰にも分からない…私より先に死なないで」と自分の娘に つぶやきますが、親が子供に求める究極の願望だと思いました。

舞台演劇を元にした本作の最大の見所は老練な役者陣による会話劇。優しくも怒りを内包した叔父を演じたチャールズ役のクリ ス・クーパーや、真面目過ぎて周りと衝突してしまう長女を演じたバーバラ役のジュリア・ロバーツも秀逸でしたが、何と言っても歯に衣 着せぬ発言で家族を罵倒する母親を演じたバイオレット役のメリル・ストリープの役が憑依した怪演に圧倒されました。

バイオレットが劇中、何かに満たされた少女の様な笑顔で草原を走る場面があります。彼女が無意識に安息の地を求めていたと思 わせるその場面ですが、もしかしたらその安らぎの場所とは家族一同が集まる家の食卓なのかもしれません。

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コトブキツカサ プロフィール

静岡県 富士宮市出身
映画パーソナリティ
日本工学院専門学校(放送・映画科)
 非常勤講師
【テレビ】
Soleいいね!(SBS)他3本
【ラジオ】
コトブキシネマ(文化放送)他2本
【ポッドキャスト】
日映シネマガ
【連載】
プレイボーイ EX大衆
KOUSHO(広昌工業)HP

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