第二回「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」
監督 :大森 立嗣
出演者:松田 翔太
:高良 健吾
:安藤 サクラ
孤児院で兄弟のように育ったケンタ(松田翔太)とジュン(高良健吾)は、電動ブレーカーでひたすら壁を壊すだけの解体現場で 働く日々を送っていた。安い賃金に過酷な労働環境、そして陰惨ないじめに遭い、行き場のないいら立ちを募らせた彼らは、兄貴のいる北 へ向かうことにかすかな希望を抱いて、旅に出ることにするが……。
ケンタとジュンとカヨは人として心に深い闇を抱えながら意図的にその闇から目を逸らし日常を過ごしています。そして未熟で不 完全だからこそ他人との強い繋がりを求めているのです。
「三人なら、生きられる」が本作のキャッチコピーですが、欠けたピースを補いながら寄り添い生きる3人の姿に心を鷲掴みされ ました。
ケンタとジュンは解体工場で働いていますが仕事は過酷で先輩から精神的にも肉体的にも追い詰められます。
そんな2人が仕事を終え工場に隣接している部屋で過ごす時間が誰からも邪魔されない休息の時間です。
2人が寝起きするその部屋で深夜に将来の夢を語らうシーンは壮絶な人生を歩む2人の柔らかい部分が見える僕が大好きな場面で す。
ロードムービーという魅惑的な響きは世代やジャンルを超えて観客に概念を訴えかけてきますが、本作ではケンタとジュンとカヨ が網走で服役中のケンタの兄に逢う為、3人で北海道を目指します。ケンタの兄は幼女誘拐未遂で逮捕され、出所後に傷害事件で再び逮捕 されてしまいます。その兄のせいで職場で先輩からイジメられていたケンタは漠然と人生の落とし前をつけに行くのです。
「世の中には二種類の人が居る。ひとつは人生を自分で選べる人。もうひとつは選べない人…」ケンタは自分が後者であると気づ きながらも現状からの変化を望みます。劇中スクーターでパトカーに突っ込むケンタは宙を舞い上がりますが、その刹那に彼は暖かい光を 見つけます。それはケンタ自身の未来への願望であり、安息の地だと感じました。
自分の居場所や存在意義を探す物語を青春映画として定義するならば、本作ほど混じり気のない青春映画は類稀です。滑稽な姿を 露呈しながらも現状を打破しようとするケンタとジュンとカヨが愛おしくてたまりません。人として不完全で不確定な日々を過ごしながら も、もがき苦しむ彼等を誰が蔑む事が出来るのか?
本作は貴方の人生を変えるかもしれない傑作です!