コトブキツカサさんが映画に登場する人物と建物の素敵な関係をツキイチ連載 映画における住居の風景

第四回「私の男」

公開日:  最終更新日:2016/07/02

「私の男」

【監督】 熊切和喜

【主演】 浅野忠信 二階堂ふみ

奥尻島に猛威を振るった津波によって孤児となった10歳の花(山田望叶)は遠い親戚だという腐野淳悟(浅野忠信)に引き取られ、互いに寄り添うように暮らす。花
(二階堂ふみ)が高校生になったころ、二人を見守ってきた地元の名士で遠縁でもある大塩(藤竜也)は、二人の歪んだ関係を察知し、淳悟から離れるよう花を説得。やがて厳寒の海で大塩の遺体が発見され、淳悟と花は逃げるように紋別の町を後にするが……。

世間の常識や理屈を超えた禁断の愛を描いた本作は否が応でも観客の頭にモラルという概念を植え付けますが、花と父親代わりの淳悟を結ぶ深い愛情は他者の倫理を軽くいなします。

映画の冒頭、海から這い上がるずぶ濡れになりながらニヤリと笑う花。あとに展開される物語の主役である彼女の「背徳的な美意識」がスクリーンから強烈に伝わりました。

2人が住む家は決して豪邸ではなく、かなりの築年数が伺える木造家屋ですが、淳悟と花にとってかけがえのない場所であり「家族としての聖地」です。世間から見れば歪んんだ父子関係を築き上げようとしてる淳悟は花と暮らせる事が全てであり一つ屋根の下で過ごす事が最も大事なのです。

劇中、花が淳悟について「あの人は心が欲しいんだ。だからあげたんだ…。」と語ります。埋めようとし、彼女もそれを真正面から受け入れるのです。

北海道の壮大な風景を舞台にした本作の見所の一つは35mmフィルムで撮影されたオホーツク海に敷かれる流氷です。この圧倒的な存在感を放つ流氷が作品のテイストと方向性を示唆してると言っても過言ではありません。ちなみに16年に渡る物語を撮影するにあたって、時代が醸し出す質感を演出するためフィルムとデジタルを併用したそうです。

1人の少女だった花の「成長」と「卒業」を描いた本作を是非体験してみてください。

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コトブキツカサ プロフィール

静岡県 富士宮市出身
映画パーソナリティ
日本工学院専門学校(放送・映画科)
 非常勤講師
【テレビ】
Soleいいね!(SBS)他3本
【ラジオ】
コトブキシネマ(文化放送)他2本
【ポッドキャスト】
日映シネマガ
【連載】
プレイボーイ EX大衆
KOUSHO(広昌工業)HP

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